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Vol.038 インドネシア実習生のリアル1

みなさんこんにちは!
ジャカルタの下村です。早いものでここにきて8か月が過ぎました。

ヤマトデータベースではインドネシアの実習生の受入れを開始してすでに1年が経過しており、
すでに2期生の面接を終えられた受け入れ企業様もちらほら。

面接や視察、地方都市の視察などを経て、少しずつインドネシアの実習生(と、その候補者)の置かれた環境が見えてきました。

日本側では技能実習生に変わる新制度「育成就労」がどういったものになるのかに注目が集まりがちですが、「技能実習」にせよ「育成就労」にせよ、日本行きを希望する若者が本国でどのような状況に置かれているかを知るのもまた、重要なのは間違いありません。

これはインドネシアであっても、ベトナムであっても中国、ミャンマーであっても同じことが言えるでしょう。

今回はインドネシアの実習生のリアルを現地で見て聞いた事からご紹介いたします。
もちろん、これは実習生候補者の全てに当てはまることではありませんが、インドネシアからの実習生を面接する際に参考にしていただければと思う所存です。

※労働や賃金と言った話題にはなりますが、インドネシア国内の状況の話題です。
技能実習という制度はあくまで労働ではなく、技術移転および実習であります。
また別の話題という事をご理解の上、お読みいただけますと幸いです。

1候補者たちの現在の収入

面接の際、現在の仕事については定番の質問なのですが、その際に現在の収入についても聞くことは多いです。答えはだいたい日本円で2万円台。3万円台や1万円台後半という答えも時折ありますが多くはありません。
以前、ロンボク島でインタビューをした2人の答えもそうでしたが、他の地域でも似た水準のようです。

ここで注意していただきたいのは、他の地域という言葉が指すのは、
日本での実習を希望する若者が多くいる、中部ジャワ等のインドネシアの田舎の地域 という意味であることです。

首都ジャカルタでは最低賃金は日本円で約5万円。
外資系企業の多くある隣県のブカシでは最低賃金はジャカルタを超えるとの情報も。
ただし、それは大都市での話であり、インドネシアの田舎の最低賃金は実習生(候補者)の答えの通り、2万円台の場所が多いです。
日本人にとって、最低賃金が2倍以上も違うというのはなかなかピンとこないものがありますが、インドネシアではこれが現実です。

https://www.nna.jp/news/2594005

ちなみに、ジャカルタやブカシなど大都市で生まれ育った若者が日本行きを希望することは、0ではないものの、非常に少ないのが実情です。
現在の収入がそれなりにある場合、技能を習得できるとしても日本行きに魅力を感じないというのも道理ですね。
(これはベトナムや中国でも同じことが言えますね。)

2候補者たちの職歴

実習生候補者たちの職歴は賃金に比べて、幾分「人それぞれ」です。
ただ、2つの傾向が見れます

2-1「出稼ぎ」は身近な存在

これは特に男性の候補者に多いことですが、主に建築の関連の仕事などで、親元を離れ都市部で仕事を経験している者も少なくありません。

中には3年間も実家に帰らずにジャカルタで仕事をしていた候補者や、ヒンズー教徒が多くジャワ島出身のイスラム教徒には少し大変なバリ島で仕事をしていた候補者も。
上記の最低賃金の格差も理由の一つと推測されますが、遠方に出稼ぎに行く という事にはあまり抵抗がない様子です。

候補者の履歴書を見ても、両親や兄弟、姉妹が現在海外で就労中、というケースはそう珍しくはありません。また、日本への実習生以外でも、韓国や台湾などへの出稼ぎを希望する者も多いようです。

実習生候補者の親世代や30~40歳代であっても、海外で出稼ぎをしている方が身近にいる環境を見るに、インドネシアの若者にとっては都市部での出稼ぎや日本行きというのは、気持ち的にそこまでハードルが高いものではないようです。

面接する場合、例えインドネシア国内であっても親元を離れ長い期間就労した経験がある候補者は、日本という外国での3年間の前段階として、国内で同じような環境をすでに経験しているという意味で一定の評価ができるでしょう。

ジャカルタの建設作業員の帰宅風景。確かにここジャカルタにはたくさん仕事がありますが…


2-2実質的には有期雇用?

面接の際のもうひとつの定番の質問として、日本へ行くことの動機があります。

そしてそれに対する答えでよく耳にするのが
「ここ(インドネシアの田舎)にはよい仕事がありません…」
というものです。

もちろん賃金的な意味合いもありますが、どうやらそれだけではない様子です。

インドネシア国内の労働では、「勤続が1年以上になる場合、給料を上げなくてはいけない。(勤続1年未満は最低賃金)」というような制度があるそうなのですが、これがうまくいっていないケースが少なくない模様。

どういうことかと言うと、安い賃金で働いてほしい企業側は、1年で雇用を打ち切り、また最低賃金で別の者を雇用するというような方式をとる事が多々あるそうで、コンビニや簡単な作業の工場で特にこういったケースが多いのだとか。

全人口に占める労働人口が非常に大きいインドネシアですが、それが裏目に出ているように感じてしまいます。

ちなみに、Grabなどのドライバーは、上記のような雇用方式ではなく、車やバイクを持ってさえいればずっと仕事をできるので人気という話。

面接では転職理由の確認を

通常なら、1年周期で職を転々としている候補者はあまり良い印象は持たれません。

ただ、インドネシアでは上記のような事情があるので、本人の意思に関わらず、仕事を変えざるを得ない状況にあった者もすくなくありません。

面接の際、退職や転職した理由を確認する事は重要です。

「実習期間3年」は候補者にとって魅力的なのです

また、国内がそんな状況なので、インドネシアの実習生候補者には、実習の3年間という期間を魅力に感じる者も多いです。合格後も(現行法では可能な実習3号の)2年延長に対し積極的な声もよく聞こえてきます。

1年ごとに新たな職を探さなくてはならない。その心配をしながら働き続けなくてはならない。
(もちろん、実習生候補者の全員がそのような状況というわけではありませんが)
という状況なら、たとえ3年間でもひとつ心配事が消えるというのはうれしい事ですね。
2年延長しての5年を希望する者が多いのも頷けます。

確定していない条件について考えるのは好きではありませんが、
技能実習から育成就労へ制度が変わる際の大きな変更点のひとつとして、受入企業への配属1年後には条件はあれど、転職が可能になるという話もあります。
ですが、せっかくの縁組合としても、おそらく受入企業様としても3年、もしくはそれ以上続けてもらいたいもの。インドネシアの実習生は、上で述べたような国内の状況から、会社を変えずに長く続けることに魅力を感じてくれる者が多そうだな…!と、希望を持ってしまいます。

長くなってしまいましたので今回はこの辺で。

今回はかなりお堅い話題になってしまいましたね。
次回は脱力系の話題を!

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